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ハウス栽培の調製作業

JA共販農家の事例

 JA共販で卸売市場へ出荷しているハウス栽培農家は露地栽培のJA共販の場合と同様、基本的にはホウレンソウ部会(名称はJAにより異なる)の統一技術により栽培から出荷までの作業をおこなっています。
 しかし、地域に建設されたハウス団地が団地で部会や組合をつくってホウレンソウ産地を形成している場合は、その部会やハウス団地組合が農機の共同購入・共同使用や調製作業施設の共同使用などの省力化、安全・安心な栽培技術の確立、生産拡大などの取り組みを独自におこなっています。
 ハウスによる雨除け栽培は、多雨や風による発芽不良、葉傷みや一部の病害虫を防止するメリットがある一方で、立ち枯れ病、萎凋病、根腐れ病などの土壌病害が発生しやすいため高温期の土壌消毒が不可欠となっています。そして、さらに土壌病害の発生しやすい消毒後2作目の前にも再度、消毒を実施せざるを得ない連作ハウスもあります。
 ここでは調製作業に機械を導入して生産拡大や高齢者の作業の軽減化に取り組んでいる事例をご紹介します。

目  次
事例1 高齢者を支える持ち寄り共選 FG仕上げ    (石川県金沢市) 
事例2 個選から共選へ FG仕上げ         (岩手県八幡平市)
事例3 生産拡大を実現した共選共販出荷 FG仕上げ  (兵庫県養父市)
事例4 ハウス団地組合共用の袋詰めライン FG仕上げ (秋田県横手市)
用語の解説
 
 
 
 
 
 


 
1.産地の概要

 
医王山(いおうぜん・939m)の辺りは稲作農家のための稲もみを生産する種場だが、減反を機に水田跡地を利用して1980年代にホウレンソウの生産が始まった。
 

 
2.産地のホウレンソウ生産について

 

 
3.事例農家の生産概要と調製時間

 

4.調製作業の流れ










 
 
 


 
1.産地の概要

 
西根盆地では真夏にヤマセによる冷害に見舞われることが多かったため、減反が強化されるようになったのを契機に、1980年に水田跡地で夏どりホウレンソウの生産を開始した。
 

 

 
2.産地のホウレンソウ生産について

 

 
3.共同調製作業の概要と調製量

 

4.調製作業の流れ






 
 
 


 
1.産地の概要

 

 

 
2.産地のホウレンソウ生産について

 

 
3.共同調製作業の概要と調製量

 

4.調製作業の流れ









 
 
 


 
1.産地の概要

 

 

 
2.産地のホウレンソウ生産について

 
1998年にホウレンソウハウス50棟、シイタケハウス2棟でスタートした平鹿町ハウス団地は14年目の2012年にはホウレンソウハウス242棟(1棟の規模は3.3eと2.5eで、生産者7名の自宅ハウスも含めると280棟)にまで拡大。管理の行き届いたハウス群は整然として美しく、団地組合の順調な経営を反映している。
 

 
3.事例農家の生産概要と調製時間

 

4.調製作業の流れ








 
 
 

用語の解説

アール メートル法の面積の単位(記号a)。フランス語areの音訳。
1e=100u=約30坪
10e=1000u=約1反(1反=300坪=約991.7u)
相対取引 あいたいとりひき。多数の買い手が競い合って公開で買値を決めるセリとは異なり、1人の売り手と1人の買い手が話し合いにより販売物の数量や価格などを決めて売買すること。具体的には、卸売業者が卸売場で生鮮食料品などの卸売をするとき、販売価格や数量について仲卸業者または売買参加者と交渉して販売する方法をいう。
EC イーシー。Electric Conductivity(電気伝導度)の略で、土壌水に溶けている窒素、リン酸、カリなど肥料イオンの総量を示し、通常、mS/cm(ミリジーメンス・パーセンチメートル)と表示する。一般に硝酸態窒素量との相関が高い。EC値が高い(塩類集積)と作物の生育が抑制されるため、土壌診断により適正な施肥量が求められている。除塩の方法にはトウモロコシなどのクリーニングクロップなど比較的耐塩性の高い作物を作付けるほか、深耕や天地返し、潅水や湛水などがある。
言い値 いいね。売り手の言うとおりの値段。
入り目 いりめ。束やFG入りホウレンソウが消費者の手元に届くまでに水分の蒸発などにより減量することを見込んで、通常は規格の重量に5〜10%ほど増量すること。
エコファーマー 平成11年7月に制定された「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(持続農業法)」第4条に基づいて、「持続性の高い農業生産方式の導入に関する計画」(具体的には堆肥や緑肥などにより土づくりをし、化学肥料や化学農薬の使用量を減らす生産方式の導入計画)を都道府県知事に提出し、その導入計画が適当であると認定を受けた農業者(認定農業者)の愛称名。エコファーマーになると、認定を受けた導入計画に即して、金融・税制上の特例措置が受けられる。
園芸作物 えんげいさくもつ。野菜、果樹、花卉(かき・観賞用植物)。
共選 一般に、生産者が生産した果物や野菜をJAなどの共選場(共同選果場)に持ち込んで、一定の規格・等級の基準に基づいて選別・選果または検査・格付けをおこなうこと。ホウレンソウの場合は共選場(共同調製作業場)で調製すること。調製(共選)後は共販出荷するので、通常は野菜集出荷場に調製設備を整備している。
共販 生産者が青果物をJAや出荷組合を通じて卸売市場へ出荷する出荷方式のこと。JA共販は系統出荷とも呼ばれる。(JAや出荷組合が卸売市場を通さず直接小売店へ卸す場合は「直販」)
減反 げんたん。1970年頃から実施された減反政策のこと。日本では1964年をピークにして、米の1人当たり年間消費量が減少する一方で、農業技術の向上により生産量が高水準で推移し、食糧管理制度(主食である米や麦などの価格や供給などを政府が管理する制度)のもとで政府の在庫米が度々急増したため、その対策として米の作付制限と他の作物への転作により米の生産調整(減反)を行った。それから34年後の2004年には水陸稲の作付け面積は292万7000f(1970年)から170万1000fと42%減少。同年、需要に応じた稲作農業者の主体的な判断を基本とする米生産の調整の仕組みが採り入れられたが、以降も需要量は減少し続けており、その後、政策面では、加工用米、米粉用米、飼料用米などの新規需要米制度や、最近では農業者戸別所得補償制度(2013年度は経営所得安定対策)による支援なども行いながら、米の需給を調整するための取り組みがなされている。
光合成細菌 こうごうせいさいきん。太陽エネルギーを利用して嫌気的条件(無酸素状態)で光合成を行い、さらに空気中の窒素ガスを吸収利用して菌体のタンパク質を合成することもできる細菌。水田などの湛水状態の土や湿地土壌など酸素がなく有機物の多いところに数多く生息し、水田の秋落ち現象やレンコン栽培地の根腐れを防止し、生糞や魚かすなどの分解時に生じる有毒成分ピユトレシンなどを消化除去する。また悪臭の除去や汚水の浄化などにも利用されている。好気的な畑に微生物肥料(光合成菌体とその分泌物)として施用すると、放線菌などのエサとなり放線菌/糸状菌の比率を増大させフザリウム菌などによる土壌病害を防ぐほか、作物の根に分泌物を供給してビタミンB・Cの増加、色づけ、貯蔵性など作物の品質を顕著に向上させる。中性〜微アルカリ性を好み、0℃〜約90℃の水温で生息できる。
耕種作物 こうしゅさくもつ。田畑を耕して栽培する作物で、水稲、陸稲、麦類、雑穀、豆類、いも類、野菜、果樹、工芸農作物、飼肥料作物、花卉(鑑賞のために栽培する植物で、花物、葉物、実物などがある)、薬用作物、採種用作物、桑など。
個選 共選に対して、生産者が個人でホウレンソウを調製することをいう。
個販 調製したホウレンソウを個人で卸売市場へ出荷する出荷方式。
糸状菌 しじょうきん。一般にカビと呼ばれる好気性の従属栄養(有機物を炭素源として生育する)微生物で、大部分は糸状の菌糸からなり、そのほとんどは土壌中に生息し、キノコや酵母もこれに属す。一部に作物の土壌病害を引き起こすピシウム菌、リゾクトニア菌、フザリウム菌のような病原糸状菌がいる。細菌や放線菌と異なり弱酸性の環境を好み、通気性のよい畑土壌などで旺盛に増殖するが、湛水した水田の嫌気的土壌では生育が難しい。
田畑輪換 たはたりんかん。水田を1年以上の間隔で水田、畑として交互に利用すること。水稲は増収し、畑作物は連作障害を回避できる。
反収 たんしゅう。10e(1000u)当たりの収量(収穫の分量)。
たとえば平成23年度のホウレンソウの全国統計で、作付面積21,800f、収穫量263,500d、10e当たり収量(反収)1,210s。
手枡 てます。経験的に手が覚えた重量感覚でホウレンソウを計量すること。ときどき秤で重量をチェックして規格重量を確認する場合もある。秤による計量作業を省くことにより調製時間を短縮できる。
点播 てんぱ。一定の間隔をおいて1〜数粒の種子を播くこと。たとえば、株間15cmで5粒の種子を点播することは、株間3cmで1粒ずつ播種する場合と土壌環境はほぼ同じと考えられている。
特別栽培農産物 とくべつさいばいのうさんぶつ。土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培方法を採用して生産することを原則とし、
(1)節減対象として定められた農薬の使用回数が従来の使用回数の50%以下
(2)化学肥料の窒素成分量が従来の使用量の50%以下
で栽培された農産物。
仲買 なかがい。卸売市場の仲卸業者のこと。市場開設者の許可を得て卸売市場内に店舗を持つ。生産者が卸売市場に搬入して卸売業者に販売委託した青果物を、卸売業者からセリや相対取引で購入しスーパーや小売店などに販売する中間業者。
被覆肥料 ひふくひりょう。肥効調節型の肥料。肥料粒子にポリエチレン樹脂などでコーティング(被覆)して肥料成分が徐々に溶出するよう調整したもの。たとえば「NKロング180」は、窒素(N)とカリ(K)が気温25℃の一定条件のもとで肥料成分が溶出しつづけ、180日で肥料成分の80%が溶出するよう設定されている。実際には気温などの条件により溶出する量は変化する。ホウレンソウは生育特性として生育前半は窒素の吸収が緩やかで生育が遅く、後半になって急激に吸収量が増えて生長するため、このような緩効性の肥料が適している。
ヘクタール メートル法の面積の単位(記号ha)。フランス語hectareの英語読み。
1f=100e=10000u=約1町(1町=10反=3000坪=約9917u)
放線菌 ほうせんきん。糸状菌のように菌糸を伸ばすが、菌糸の微細構造は細菌と同じという従属栄養微生物。多くは糸状菌のように好気性だが、細菌のように中性〜微アルカリ性を好む。そのほとんどが土壌に生息し、加水分解酵素を分泌して土壌中のタンパク質、セルロース、リグニン、キチンなどを分解、利用する。キチン分解菌はフザリウム菌など糸状菌の細胞壁(キチン質)を分解して溶菌し、土壌病害の発生を抑える。土壌中で最も多いストレプトマイセス属ではジャガイモそうか病菌が知られているが、各種の抗生物質を生産するものも多い。土壌特有の臭いは放線菌の生成物によるといわれている。
有機栽培 ゆうきさいばい。化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと等を基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法。(環境負荷:環境に加えられる影響であって、環境保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。農業分野においては、化学肥料・農薬の過剰投入や家畜排泄物の不適切な管理等が環境負荷の原因となる。)
有機JAS認証制度 ゆうきジャスにんしょうせいど。有機食品の検査認証制度のこと。農林水産大臣に登録した第三者機関(登録認定機関)が、有機農産物等の生産行程管理者(農家や農業生産法人等)や製造業者を認定し、認定を受けた事業者が生産または製造・加工した有機食品について、有機JAS規格に適合しているかどうかを検査し、その結果、適合していると判断されたものに有機JASマークを付し、「有機」の表示ができる制度。
ユネスコ UNESCO(国際連合教育科学文化機関、United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)は、諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関。1946年の創設以来パリに本部を置き、日本は1951年に加盟。
予約相対取引 よやくあいたいとりひき。相対取引には、市場に入荷した現物を見て価格を決める方法の他、卸売業者が買い手(仲卸業者など)から予約注文を受け、産地(または生産者)に発注して出荷してもらい買い手に卸売りする方法があり、これを「予約相対取引」と呼ぶ。
6次産業化 ろくじさんぎょうか。1次産業としての農林漁業と、2次産業としての製造業、3次産業としての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取組。この取組を進めていくため平成22(2010)年11月、「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化法)が成立した。「6次産業」の6は「1次産業・2次産業・3次産業」の数字を加えたもの。
6次産業化先進事例集【100事例】(平成23年4月)